【素晴らしい玩具】
(底本:平和的玩具_サキ)

「あら、ガブリエル。随分久しぶりね。忙しくしているの?」
「ああ、姉さん。しかし、最近の子供達は手作りのおもちゃを欲しがらないんですよ。」
「そうなの?けれど、うちの子たちは遊んでばかりでまったく宿題をしないのよ。」
「そうだ、遊び自体が勉強になる玩具を作れば良いのか。それは素晴らしい!」
翌週ガブリエルは大きな包みを持って姉の家へ赴いた。
「伯父さん。こんにちは!」
「伯父さん。その包みはプレゼント?」
「ああ、そうだよ。存分に遊びないさい。」
「あら、ガブリエル。早速持ってきてくれたのね。」
「ああ、姉さん。これは素晴らしい玩具だよ。派閥争いや、政策の優劣を競う社会的な玩具なんだ。これで遊びながら政治や社会のことを学べて、聞き分けのいい子供になるというものさ。」
「これ!お前たちっ!伯父さんが持ってきてくれたおもちゃを振り回すんじゃありません!」
「なぁに、遊び方が分かったら親の注意を受けるまでもなく、正しい行いができるようになりますよ。どれ、貸してごらん。遊び方を教えてあげよう。」
ガブリエルは熱心に派閥の組み方や、敵対勢力の取り込みの仕方を教えた。
子供たちは、つまらなくなりいつの間にか部屋を去っていた。
ガブリエルの派閥はみるみるうちに勢力を増し、国民は理智にとみ怠け遊びほおけるものはいなくなっていった。
この素晴らしい玩具のなかで、カブリエルは理想の社会像と人間像とを構築していった。
「あら、お前たち。宿題は終わったの?」
「うん。とっくに終わったよ。」
「そろそろ夕食にしましょう。ガブリエル伯父さんは?」
「まだ政治ごっこをしているよ。」
「まったく、仕方がないわね。けれど、お前たちが宿題をするくらいだから、よほど素晴らしい玩具なのかもね。」